COBOLコンソーシアム利用技術分科会
清水 真 (東京システムハウス株式会社 ビジネスイノベーション事業部)
本章では、メインフレーム/オフコンで稼働するCOBOLをオープン環境に移行する手順を説明します。
サーバー機のリプレースに主眼を置いた単純移行は、COBOL To COBOLでオープンシステムへと移行します。また,他言語でスクラップ&ビルドすることに比べ、①開発期間が短い、②低コストである、③信頼性を引き継げる、④プログラムや人材を活かせる──といったメリットが得られます。
本章では移行開発のプロセスを説明し、次章から上流工程、実装、照合テスト──という順で移行手法を解説していきます。
移行前のCOBOLシステムに含まれる、ソースコードやJCLなどのシステム資産を徹底的に洗い出します。プログラムにとどまらず、運用も含めてシステム全体に漏れがないように注意が必要です。
調査分析工程の結果に基づいて、移行後のシステム機能やシステム構成、移行手順などを決定します。上流工程で、運用設計を含めて、できるだけ細かいレベルまで移行後のシステムを定義しておくことが重要になります。
また単純移行では、「旧システムと同じアプリケーションをオープンシステム上で実現すること」そのものが要件になります。
要件定義に基づいて変換仕様を作成します。この時点で、設計すべき項目を漏れなく洗い出しておくことが、後工程で手戻りを減らすために欠かせません。
変換仕様に基づいてシステムをオープンシステム向けに変換していきます。ツールを導入するなどして、短時間で機械的に実行することが肝心です。変換ツールの対応範囲が広く正確であれば、この工程にかかる時間は大幅に短縮できます。
単純移行のテストでは、移行後のシステムの結果と現行システムの処理結果を照合します。
ここでは移行前と移行後のシステムに、“同じデータ”をインプット・データとして使用することが重要です。
総合テストの内容は新規開発の場合と同様です。実際の運用を想定してシステム全体をテストします。なお、この総合テストでは本番データの移行についてリハーサルも実施してくのが良いでしょう。
新しいマシンへのインストール方法や手順なども、新規システム開発時と変わりません。この工程で新規開発と異なる点は、単純移行ではユーザー教育コストがほとんど不要という点です。本番データ移行もこの段階で実施します。
オープンシステムに移行することでシステムの運用保守は大きく変わります。そのため開発者、運用担当者ともに、オープンシステムでの開発/運用のルールを習得する必要があります。