中野恭秀(マイクロフォーカス 営業部部長)
e-businessを実現し事業の競争力を強化する企業が増えている。特に損保業界では保険料自由化により厳しい競争時代に突入している。安田火災海上保険では、自動車保険ONEのインターネット見積りを実現し、代理店を支援している。この見積りシステムでは、メインフレームで稼動するCOBOLの計算サブルーチンがWindows NT上で動くCOMコンポーネントとして移植されている。既存のCOBOL資産を活かし短期間でWebシステムを構築した事例である。もちろんCOBOLが計算していることは、Webブラウザからはわからないが。
http://www.yasuda.co.jp/insurance/one/index.html
従来メインフレームで実現してきた大規模システムの多くは、COBOLで開発されて来た。代表的なものとして、金融機関の勘定系システムが挙げられる。このようなシステムのオープン化検討においては、移植性、処理性能に対して漫然とした不安を持ち、具体的な評価を行わず、安易に新規開発を選択していないだろうか。日本ユニシスは、「オープン勘定系を成功させる秘訣」として、移植負荷と処理性能に関して実証実験を行い、オープン環境でもCOBOLを利用する効果を証明している。
http://nikkei.hi-ho.ne.jp/unisys/n7_p1.html
新規システム開発においてもCOBOLは活躍している。野村総合研究所では、確定拠出型年金401k運用システム構築にCOBOLを採用した。UNIX、Windowsなど様々なプラットフォームにおける互換性の高さ、ANSI規格によりメーカーに依存せず長く使い続けることのできる安心感、プログラマに依存しない高い可読性がCOBOLの採用を促した。また、野村総合研究所では、過去にCOBOLで開発した業務アプリケーション部品をEJBにより、Javaによる新規開発案件で再利用することにも取り組んでいる。
教育においてもCOBOLは現役である。所沢商業高校、中京大学など教育機関においてCOBOLによるプログラミング教育が行われている。SI企業における新人教育では、COBOL教育が減少していたが、野村総合研究所、CAC、東邦システムサイエンスなどではカリキュラムを復活させる動きがある。アルゴリズムの学習や他人が見てもわかるプログラミングの習得にCOBOLが適すると評価されている。
ERPパッケージを開発している企業においてもCOBOLの安定性、互換性、プラットフォームに依存しない高い移植性を評価している。日本ピープルソフト http://www.peoplesoft.com/jp/jp/ の経理財務パッケージやソルコープジャパン http://www.solcorp.com/ の統合生命保険業務パッケージ「INGENIUM」では、Webの仕組みを積極的に取り入れながら、バッチ処理などではCOBOLが使われている。
このようにCOBOLは、様々な情報システムで活躍している。COBOLプログラマはこれからも安心して使いつづけてほしい。またCOBOLを知らないプログラマも一度は触れてみてほしい。
(「日経ソフトウエアメールマガジン3月7日号」に掲載)